仏像の素材にはどんな種類がある?知っておきたい材質5つ
2018年12月21日
日本に残された歴史ある仏像には、それぞれ異なる雰囲気があります。
姿形が違うのはもちろんですが、実は仏像の「素材」による違いも、仏像の個性に大きな影響を与えているのです。
こちらでは、代表的な仏像の素材である木材・乾漆・粘土・金属・石材の特徴を、種類ごとにご紹介します。
【その1】木材
木材は、仏像の素材として日本でもとりわけ多く使用されてきた歴史があります。
仏像に使われる木材にはいくつかの種類があります。
代表的なのは、ヒノキ・カヤ・クスノキ・ツゲ・ビャクダンといった木材です。
クスノキは飛鳥時代から仏像制作に使われてきました。
そこから、ヒノキやカヤが使用されることが増えてきたようです。
また、木彫りの仏像を制作するうえでもっとも古くから続いているのは、「一木造り(いちぼくづくり)」という技法です。
こちらの技法では、ひとつの木からひとつの仏像を彫り出します。
それに対して、複数の木を寄せ集めた木材からひとつの仏像を彫り出すのが、「寄木造り(よせぎづくり)」という新しい技法です。
平安時代頃から用いられるようになりました。
寄木造りによって生まれた仏像としてよく知られるのが、平等院鳳凰堂に安置されている「阿弥陀如来坐像」です。
こちらの仏像は定朝(じょうちょう)という名の平安時代に活躍した仏師の作品となっています。
木彫りの仏像の魅力は、なんといっても経年によって自然と色味が変化することでしょう。
時間とともに仏像の味わい深さが増していきます。
また、さまざまな仕上げ方を楽しめるのも木彫りの特徴です。
木目の質感を生かした無彩色の仏像だけでなく、鮮やかな彩色が施された仏像など、同じ素材でも異なる質感を表現できます。
【その2】乾漆
乾漆(かんしつ)とは、漆を乾燥させて固めたものです。
粘土で形作られた土台に布を貼り、漆を塗って固めるのが「脱乾漆(だつかんしつ)」の技法です。
漆が乾燥したあとに土台が取り除かれます。
それに対して、木材で形作られた原型に布を貼り、漆を塗って固めるのが「木心乾漆(もくしんかんしつ)」の技法です。
乾漆の仏像は、日本では奈良時代によく用いられました。
乾漆を用いた技法は、ほかの素材を使用した場合と比べて手間がかかりますが、柔らかい印象の仕上がりになるのが魅力です。
代表作として挙げられる仏像に、東大寺法華堂に安置されている国宝「梵天・帝釈天立像」があります。
【その3】粘土
塑像(そぞう)とは、粘土で作られた仏像のことです。
粘土で形作ったあと焼かずに仕上げるため、湿度によって影響を受けやすく、非常に保存が難しいという難点があります。
しかし、現在日本に残されている塑像は、湿度が高いという条件の悪い気候にもかかわらず、当時の仏師たちの優れた技術のお蔭で保存されているようです。
塑像の魅力は、きめ細やかな仕上がりにあります。
奈良時代に多く作られ、代表的な作品もこの時代に生まれています。
たとえば、東大寺法華堂に安置されている「執金剛神立像」はその一例です。
ほかにも、日本に現存する最古の塑像として法隆寺の「金剛力士像」があります。
塑像は保存が難しいため、何度も補修されています。
【その4】金属
日本に仏教が伝わったとき、多くの寺院のご本尊は鋳造によって作られました。
粘土で作った原型と蝋を用いて、溶かした金属を流し込むことで、仏像を制作します。
加工がしやすい銅などの金属は、鋳造による仏像制作によく用いられました。
有名な「東大寺盧舎那仏像」をはじめとして、大仏と呼ばれるほどの大きな仏像は、ほとんどが鋳造によって作られています。
奈良県の東大寺の大仏や、神奈川県鎌倉市にある高徳院の大仏は、鋳造によって作られた仏像の代表例です。
ほかにも、表面に金メッキを施された「法隆寺金堂釈迦三尊像」などが挙げられます。
仏像自体は銅で作られていますが、当時から貴重な金属であった金を表面に使用することで、金色に光る美しい仕上がりが実現されています。
【その5】石材
日本にはあまり例が多くないものの、石を材料に仏像が作られることがあります。
大きな岩の多い海外とは異なり、日本ではそれほど普及しませんでした。
石仏は、切り出された岩に仏像を掘るだけでなく、自然界に存在する大きな岩山に仏像を掘ることもあり、これを「磨崖仏(まがいぶつ)」と呼びます。
国宝に指定されている「臼杵石仏(うすきせきぶつ)」は、平安~鎌倉時代に作られた磨崖仏です。
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